コンサート「Vivaldi i Folkton」Erik Rydvall, Kristine West & Drottningholm Baroque Ensemble

 ただ言葉を奪われて立ち尽くすように、衝撃に包まれて音楽に聴き入る瞬間。新しい音楽を求めていると、時折そうした僥倖に巡り会うことがある。いやむしろ、そういう瞬間を求めて知らない音楽を聴こうとするのだと思う。

たまたま昨日見ていたコンサートの映像は、いつ以来だろうか、コロナの影響でライブにも行かなくなったためか長らく忘れていたその感覚を取り戻してくれた。



演奏は3:30頃から。

2020年9月20日、YouTubeで同時配信されたこのコンサートが行われたのはストックホルムにある「貴族の家(Riddarhuset)」。1668年に建てられたバロック建築のこの建物は貴族の記録が保管された資料館や博物館のような施設で、こうしたコンサートの会場としても用いられている。


「Vivaldi I folkton」と題されたコンサートは、ヴィヴァルディの「四季」をフォーキッシュなスタイルで演奏するという趣旨で、2部構成になっている。前半はヴィヴァルディ「四季」やバッハのブランデンブルグ協奏曲をニッケルハルパ、リコーダーと古楽アンサンブルで演奏している。後半は出演者のオリジナル曲や伝統曲を演奏している。

参加したミュージシャンは以下の通り。

〔第1部〕
Erik Rydvall (ニッケルハルパ)
Kristine West (リコーダー、フルート)
Drottningholm Baroque Ensemble (古楽アンサンブル) 

〔第2部〕上記に加えて、
Ale Möller(マンドーラ、他)
Nordic(トリオ)
  - Erik Rydvall(ニッケルハルパ)
  - Anders Löfberg(チェロ)
  - Magnus Zetterlund (マンドリン)



序盤のヴィヴァルディには度肝を抜かれた。ニッケルハルパもリコーダーも決して機動力のある楽器ではないのに、目まぐるしい旋律を難なく演奏する2人の演奏力はもちろん、小さい編成で迫力と生み出すアンサンブルの演奏力にも圧倒される。

特に注目したのはニッケルハルパのErik Rydvall。ニッケルハルパは擦弦楽器だが鍵盤で弾くので、ヴィブラートはかけられず、硬い旋律というか、抑揚の少ない素朴な旋律が特徴だと思っていたのだが、彼が弾くと全く違う楽器のようだ。まず音が綺麗に響いて美しい。そして歌うような、自然な抑揚に満ちている。これが本当にニッケルハルパなのだろうか、と疑りたくなるのだが、紛れもなくニッケルハルパなのだ。そして彼がニッケルハルパを弾く姿も本当に美しい。

Kristine Westの力量もまた、リコーダーというシンプルな楽器の奥深さを余すところなく見せてくれる。RydvallとWestは昨年バッハをモチーフにしたDancing with Bachというアルバムをリリースしており、バッハを北欧民謡の視点から解釈した美しい演奏を見せている。Rydvallもその演奏を聴けば分かる通り、ヴァイオリンを幼少から学び、西洋の古典音楽が根底にあるようだ。アーチリュートやチェンバロの、バロック楽器特有の枯れたような、乾いた音がリコーダーやニッケルハルパの音にもほどよく調和している。


後半は印象が随分変わって、北欧民謡や各地の伝統音楽を取り入れた、現代的な感性の演奏。Ale Möllerは数々の楽器を弾きこなすスウェーデンの重鎮。そしてトリオNordicはErik RydvallにマンドリンのMagnus Zetterlund、チェロのAnders Löfbergによる、各地の伝統音楽や現代のポピュラー音楽を吸収し、親しみやすい優しい音楽を奏でる。しかしバロックのアンサンブルと彼らが交わると、急激に厚みが増して、映画音楽のような荘厳さと、田園風景の豊かさが浮かぶような、明るくてふくよかな響きになる。

それにしても演奏者たちがみな楽しそうで、特別な時間を共有していることが、画面越しでも伝わってくる。1日たったいまもまだ、衝撃が冷め切ってはおらず、繰り返し聞いている。

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