Ulf Wakenius, Lars Danielsson and Magnus Öström 『Taste of Honey』 (2020, ACT)



 ビートルズ、とくにマッカートニーの曲を中心に集めたアルバム。参加したのはいずれもスウェーデンの重鎮ミュージシャンで、ギターにはUlf Wakenius、ベースとチェロにLars Danielsson、そしてドラムは元e.s.t.のMagnus Öströmという豪華なトリオ。ACTの看板である。

どれほどの演奏力を見せてくれるのだろうかと思えば、その期待はかなり方向性が違っていた。どの曲も3分から4分程度で、アドリブは極力少なく、マッカートニーのメロディをしっかりとWakeniusのギターが聴かせ、DanielssonとÖströmのリズムセクションがそれを支えるかたちだ。アルバム自体も45分とこぢんまりした内容である。

特に目立った冒険はしないもののWakeniusのギターは緻密で丁寧である。1曲目のTaste of Honeyは、ギターソロのイントロから始まり、緊張感のあるリズムが続く。2曲目My ValentineはDaninelssonのチェロも聴かせどころがあって、それでもあまり主張が強くなく、あくまで控えめなのである。

弓弾きのチェロではじまるBlackbirdだけは6分弱と少し長め。チェロの柔らかい音とゆったりしたリズムがマッチして、中盤のギターもここではしっかり聴かせてくれる。終盤Our Livesはギターのメロディが切なく、甘いメロディはまさにTaste of Honeyという感じ。最後のElenor Rigbyも即興性こそ少ないものの、緊迫感あるリズムで彼らの演奏力を十分に発揮した録音だった。

アルバム全体を通して聴くと、3人の名前のバリューに比べて少し物足りないと思うこともあるのだが、シンプルな演奏でも彼らの味がちゃんと出ている。スローなテンポ感だとWakenius、Danielsson、そしてMorten Lundによる『Forever You』が思い出されるが、本作はそこからさらに余計なエゴをそぎ落とした印象だ。

聞けば最近はビートルズやジョンがまた人気なのだという。イントロの短い曲はサブスクのミックス再生でもスキップされづらいことが理由らしい。たしかに映画Yesterdayでも彼らの音楽の魅力を改めて感じることがあったし、特にメロディの美しさは、不安定で先の見えない時代に希望を与えてくれるサウンドでもある。それはとてもシンプルなものだけど、真理は往々にしてシンプルなのだ。

このアルバムもまた、シンプルな真理を再発見したベテランたちによる円熟の1枚だと言えるだろうか。





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