Barcelona Gipsy balKan Orchestra 『Nova Era』(2020, Satélite K)

 Barcelona Gypsy balKan Orchestra はバルセロナを拠点にバルカン音楽を追究するグループ。メンバーの国籍も多様だ。

アコーディオン: Mattia Schirosa (イタリア)

ヴォーカル:Margherita Abita (イタリア)

クラリネット:Daniel Carbonell (スペイン)

ウッドベース:Ivan Kovačević (セルビア)

ギター:Julien Chanal (フランス) 

パーカッション:Stelios Togias (ギリシャ)

フィドル:Oleksandr Sora (ウクライナ)

フィドル:Pere Nolasc Turu (カタルーニャ)

2012年にBarcelona Gipsy Klezmer Orchestraとしてデビューしたが、2015年にクレズマーだけでない幅広いバルカン音楽を演奏することを目的として、メンバーの入れ替えとともに現在の名称に改称した。略称BGKOはかつてのまま変更しておらず、したがってbalKanのKが大文字になっている。現在はクレズマーを中心に、ロマ(ジプシー)音楽やセルビアを中心にバルカン半島各地の伝統音楽を幅広く取り入れた活動をしている。

それにしてもこのグループ、演奏力がめちゃくちゃ高い。




さて、今回のアルバム、まず全体を通して聴くと、その音楽の幅広さ、多彩さに驚く。多様なリズムや旋律の音楽で、最後まで飽きない。全てが伝統曲であるらしいのだが、バルカン音楽の豊かさを垣間見ることができた。

1曲目Dancing with the Rabbi はGiora Feidmanの演奏で有名だが、ド直球の賑やかなクレズマーで勢いよくはじまる。次のCiganine Sviraj, Svirajはゆったりしたロマの伝統曲で、テンポを変えながら展開してゆく。3曲目、Constantine, Constantineも歌が中心の曲で、クレズマーらしい掛け声が多様されて勢いよくバルカン音楽の世界に入り込んでゆく。

4曲目から変拍子が用いられてより深みのある独特な音楽へと向かう。Sedi Donka – Joc Mareのメドレー、前半はアップテンポで25/16拍子(7+7+11)のブルガリア伝統音楽、後半は4拍子のモルドバの舞踏曲。クレズマーから離れてバルカン各地の伝統音楽である。

5曲目Marijo, deli Bela Kumrijoは遠く離れた恋人との悲哀を歌うセルビアの伝統曲、ゆったりとした変拍子(7/8)で徐々に感情が高ぶってゆく。

6曲目Dajchovo Horoは9/8拍子のブルガリアの舞踏曲で、流れるような楽器の掛け合い。

7曲目Kalejaca Jacaはマケドニアの中世からつたわる古い曲らしい。古めかしい感じの歌謡曲でロマっぽさがあるが、これに電気的な音を加えたらインドのポップスのようだ。

8曲目Nane Tsokha – Fuli Tschaiもロマらしい緩やかな楽器のアンサンブルのあとにシンプルな旋律の歌。共に歌うことで感情を共有する、懐かしい光景が目に浮かぶ。10曲目Jana i Alexandrisは7拍子で中東風の旋律。11曲目Krajdunavsko Horoは4拍子で陽気なブルガリアの舞踏曲だが、早めのソロの掛け合いで熱気が醸成される。

11曲目Dere Geliyor Dereはトルコの曲らしいのだが、 9/8拍子で短調、繰り返すボーカルの旋律とともに、熱気と緊張感が徐々に強まっていき、勢いを増す炎のように情熱がこみ上げ、クライマックスに。最後のBavno Horoはマケドニアの舞踊曲、ゆったりした単調から長調に転調し、最後はアップテンポで締める。


さて、クレズマーからロマ、ブルガリア、マケドニアなど各地の音楽を取り入れた今回のアルバムはそのタイトルが表すように、この新しい時代に問われる多国間の協調と融和がテーマであるように思われる。多国籍のメンバーが作る音はまさに、コロナによって国境が閉じた時代に失われつつある多様性そのものだ。旅し、人と交じりあい、踊り、打ち解けるという失われた経験をこのアルバムが再現しているかのように。





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