2018年に日本人として2人目にECMからデビューした福盛進也が、自らのレーベルnagaluを立ち上げ、その最初の1枚としてリリースされたアルバム。「月」「花」の2枚組で、参加したアーティストは12名。日本のジャズシーンの第一線をゆく30代から40代のミュージシャンが中心だ。
福盛進也(drums)、 藤本一馬(acoustic & electric guitar) 、林正樹(piano) 、佐藤浩一(piano)、 小濱明人(尺八)、 蒼波花音(sax)、 北村聡(bandoneon)、 田辺和弘(bass)、 西嶋徹(bass)、 甲斐正樹(bass)、 Salyu (vocals)、 青柳拓次(vocals, acoustic guitar)
【CD1 「月」】
1. 月はとうに沈みゆき
北村聡(bandoneon) 藤本一馬 (electric guitar) 林正樹 (piano) 田辺和弘 (bass) 福盛進也 (drums)
2. L.A.S.
藤本一馬 (acoustic guitar) 林正樹 (piano) 西嶋徹 (bass) 福盛進也 (drums)
3. 可惜夜 (Improvisation)
Salyu (vocals) 福盛進也 (drums)
4. 悲しくてやりきれない
青柳拓次 (vocals) 小濱明人 (尺八) 佐藤浩一 (piano) 福盛進也 (drums)
5. Fallen
佐藤浩一 (piano) 福盛進也 (drums)
6. Another Story
小濱明人 (尺八) 蒼波花音 (alto saxophone) 佐藤浩一 (piano) 福盛進也 (drums)
7. 美しき魂 -月-
Salyu (vocals) 藤本一馬 (electric guitar) 林正樹 (piano)【CD2 「花」】
1. Birth
佐藤浩一 (piano) 福盛進也 (drums)
2. Flight of a Black Kite
藤本一馬 (acoustic guitar) 林正樹 (piano) 西嶋徹 (bass) 福盛進也 (drums)
3. 水光 (Improvisation)
Salyu (vocals) 福盛進也 (drums)
4. 美しき魂 -花-
Salyu (vocals) 藤本一馬 (electric guitar) 林正樹 (piano) 福盛進也 (drums)
5. Lily
北村聡 (bandoneon) 藤本一馬 (electric guitar) 林正樹 (piano) 田辺和弘 (bass) 福盛進也 (drums)
6. Farewell
蒼波花音 (alto saxophone) 佐藤浩一 (piano) 福盛進也 (drums)
7. Walk
青柳拓次 (vocals & acoustic guitar) 北村聡 (bandoneon) 林正樹 (piano) 甲斐正樹 (bass) 福盛進也 (drums)
8. 花は光に導かれ
佐藤浩一 (piano)
曲は「悲しくてやりきれない」以外は福盛の作曲、あるいはsalyuとの即興だ。生まれつき右耳しか聞こえない福盛の世界を共有したいという思いから、全曲モノラルで録音されている。今年(2020年)8月下旬、関口台スタジオで録音された。
CDはここから購入できる。販売元のウェブサイトを見ていただければ分かるとおり、白をベースにした箱のようなパッケージで、開けるのもまた玉手箱を開くようにワクワクする。予約特典としてサインと写真が添えられていたが、それもまた一興でうれしい。白いと汚すと困るのでCDはすぐにPCに取り込み、丁寧に保管します。
パッケージもそうだが、曲もまた叙情性のある透き通った音であり、なつかしい感じがする。音楽としては紛れもないジャズなのだが、日本の景色を思わせるゆったりとした音。1枚目の「月」は4曲目と6曲目に尺八が入って、それこそ音も日本的なのだが、それに留まらない日本の景色がある。
ドラムも時間に切れ目を入れてビートを刻むようなドラムではなく、自然の移ろいに寄り添い、彩りを加えるようなリズムを作っている。それでいてどこか引っかかるというか、湿っぽい感じもするのだ。規則正しいリズムで主張するのではなく、雅楽や虚無僧の尺八のように、もっと長い時間の感じ方で変化を作る。直線的ではなくて、円環を描きながら移ろいゆく季節みたいだ。どこかディスク1「月」は時間的で、ディスク2「花」は色彩的という印象がした。
それにしても、ドラマーのリーダー作というとどうしてもドラムの主張を聞かせるところがでてきてしまうものだと思っていたけれど、本作にはそういうところが全くない。良い音楽は禁欲的であるが、主張せず、調和する音楽というのもまた日本的というか、アジア的だ。即興性の高い曲でも、決して奇を衒うこともなくて、安心して聴ける。
前作でECMという名門レーベルからデビューした福盛は世界を舞台に活躍するものと思っていたが、自身のレーベルで日本のアーティストとアルバムの制作をするというのは意外だった(もちろんコロナの影響かもしれないが)。しかしこのインタビュー記事を読むと、むしろECMでは作れなかった音、日本の音を希求していたことがわかる。
安易に邦楽の要素を取り入れるのではなくて、日本の感性で音楽を作るというのは容易ではないだろう。しかし福盛はそれを成し遂げたように思える。これを契機に日本のジャズがますます完成してゆくことを、期待したい。

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