グレゴア・マレのリーダー作で、Romain CollinとBill Friesellが参加したアルバム、Americana。
参加アーティストは以下の通り。
Grégoire Maret : ハーモニカ。1975年スイス・ジュネーブ生まれ、NYを拠点に活動。Jimmy Scott、David Sanborn、Marcus Miller、Pat Metheny、George Benson等のアルバムに参加。
Romain Collin /:ピアノ, Moog Taurus, pump organ & additional effects。1979年、フランス出身で現在はNYを拠点に活動。Herbie HancockやWayne Shorterのツアーに参加し、サイドマンとしてMike Stern、John McLaughlin、Christian McBride等のアルバムに参加。リーダー作に自身のトリオでThe Rise and Fall of Pipokuhn (2009, Fresh Sound)やPress Enter (2015, ACT)など。
Bill Frisell / エレキギター、アコースティックギター、バンジョー。紹介の必要はなかろう。
Clarence Penn / ドラム
Americanaというタイトルの通り、アメリカがテーマであるらしく、アメリカの民謡をモチーフにした音楽が多く収録されている。
とはいえ1曲目はMark KnopflerのBrothers in Arms。マレのシンプルなハーモニカに、余計な装飾のないやさしいピアノのデュオが寄り添う、落ち着いた曲ではじめからメロウな雰囲気に包み込まれる。
2曲目と3曲目はBill Frisellの曲だが、アメリカ民謡のようでシンプルなメロディ、どこか懐かしくて、祖先の胸に抱かれるような曲だ。Small Townは本当に、ロードムービーに出てくるような煤けた、砂煙の舞うアメリカの小さな田舎町が目に浮かぶよう。バンジョーの音色がアメリカっぽさを演出する。
4曲目San Luis ObispoはRomain Collinの曲。これも南部で歌い継がれる民謡のようで、シンプルなメロディーを繰り返して、控えめなギターソロ、エレキギターとハーモニカによるテーマと続き、砂漠の中をドライブしているみたいな曲。
5曲目Back HomeはGrégoire Maretの曲、ピアノのアルペジオに乗せて、ハーモニカが飾らないメロディを合わせ、そのあと長めのハーモニカソロがマレの才能を遺憾なく聞かせてくれる。
6曲目のJimmy WebbのWichita Lineman、8曲目のRe: StacksはJustin Verronの曲で、カントリーやフォークといった現代につづくアメリカの古き良き伝統の音楽だ。このハーモニーは、演奏するというより「歌う」と言った方が合っている気がする。
すこし異色なのは7曲目のThe Sail。これだけはジャジーで、コードも民謡よりは複雑。ハーモニカとピアノのデュオだが、2人のジャズミュージシャンとしての才能がこの曲に詰まっているかのようだ。これまで2人ともとても優しい演奏をしてきたのでどこか舐めてかかっていたけれど、ここで実力を見せつけられる。
最後のStillだけは電気的な音に高音のピアノが囀るように鳴って幻想的な印象。いままで見てきたアメリカの風景が、夢や幻だったのかと思いながらうつらうつら飛行機でまた別の目的地に向かっていくように、このアルバムが終わりを迎える。
アルバムを通じて感じられるのはもちろんアメリカの民謡と、そこから現在にいたるフォークやカントリーの伝統なのだが、それが表象するのは懐かしい何かであり、帰るべき場所であり、広大な大地に抱きしめられるような安心感である。それこそが「アメリカ」という土地の持つ包容力なのかもしれない。とおもいつつ、今のアメリカの分断を見ていると、その理想と現実の乖離にも胸が痛む。

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