Gabríel Ólafsはアイスランドのピアニスト。ジャズやクラシックを学び、2019年Absent Mindedでデビュー。本作は2020年のPiano Worksに次ぐ3作目のアルバム。とはいえ、今回は Ólafsの音楽を彼の仲間や影響を受けたミュージシャンたちがリワークした作品であり、前作では流麗で静謐なピアノソロ作品だった曲が他のミュージシャンたちによって壮大な変化を遂げた様子が楽しめる。
アルバム全体で奏者も楽器もジャンルもてんでばらばらなんだけど、それでいてすごくまとまりがある。2回ずつ演奏されてる曲が3曲あるのだが、全く曲想の違うアレンジで、同じ曲が繰り返し現れても全く違和感がない。異なった様々な音色を、統一させる力が彼の音楽の持つ引力なのだろうか。
最初のThink Of Homeはピアノの周辺にシンセや電子的な装飾音を加えたミニマル音楽のような曲。続くBáraはトラペットが入るのだが、楽器が違うのに上手に調和しているのはこのアルバムを通して感じられる印象だ。
3曲目Another Fall, Another Springは藤田 正嘉によるビブラフォンで、4曲目Lóaはおそらくマリンバに電子音楽を融合させたものだが、旋律の周辺に散らした音が心地よく響く感じが通底していて、前者がイントロになっているみたいな雰囲気がある。
終盤にシンプルな美しい曲が2曲。8曲目のFilmaのハープ、はじめはアルペジオのハープからはじまり、徐々に旋律が複雑になって、ハープの切ない音が奇麗に響いて終わる。Cyclist waltzは前作でもとても好きな曲なのだが、アコーディオンのソロ、機械仕掛けのブリキのバレリーナが傷心に苛まれて夜更けに独りで舞うような、とても綺麗な旋律のシンプルな曲。
Dropletsは複数の楽器が入ってピアノを引き立てる。染み入るようなピアノの音を決して邪魔しない。メロディはとても単純なのだが、それだけで聴く人を満足させるこの感覚は静寂にちかい。最後のStaircase Sonata、輪郭のわからない音が重なったその先にかすかなメロディが、幻のように現れて、それをつかみかねるくらいできえてゆくのは、アルバムに通底するテーマのようなものを、1曲で再現しているかのようだった。
良い音楽は禁欲的である、と先日も書いたけれど、Gabríel Ólafsは本当に欲張らない。むしろ不要なものをそぎ落として、そぎ落として、それで残った純度の高い結晶のような音を、丁寧に響かせるメロディだ。本作はそれをよく理解した彼の仲間たちが、彼の磨いた結晶を傷付けることなく様々な音色に変換していったようだ。ぜひ、前作、前々作とあわせて聴かれたい。
1.Think Of Home (Kelly Moran Rework)
2. Bára (Hugar Rework)
3. Another Fall, Another Spring (Masayoshi Fujita Rework)
4. Lóa (Niklas Paschburg Rework)
5. Filma (Kippi Kaninus Rework)
6. Bára (Skúli Sverrisson Rework)
7. Lóa (Bing & Ruth Rework)
8. Filma - for Harp (feat. Katie Buckley)
9. Cyclist Waltz - for Accordion (feat. Ásta Soffía)
10. Droplets (Variation)
11. Staircase Sonata (Variation)

コメント
コメントを投稿